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『暗い森』 アーロン・エルキンズ
今回紹介する本は、『暗い森』 アーロン・エルキンズ著です。
アーロン・エルキンズは、アメリカのミステリー作家で、スケルトン探偵シリーズで知られています。

特徴と作風
エルキンズの作品は、骨や遺骨をもとに事件を解決する法人類学ミステリーとして評価されており、シリーズの主人公「ギデオン・オリヴァー」は、その手腕から「スケルトン探偵」と呼ばれています。
科学的な考察や骨から導かれる推理が物語の軸となっており、一般的なミステリーとは異なるアプローチが特徴です。
あらすじ
ワシントン州の国立公園の大森林で人骨の一部が発見された。
遭難したハイカーの遺骸なのか?
だが、ギデオン・オリヴァー教授の鑑定の結果、骨は六年前に殺された男性のものと判明。
そのうえ、殺人の兇器は1万年前に絶滅したはずの種族が使っていた槍だった。
森の奥深くに住むという伝説の猿人が存在し、本当にあたりを徘徊しているのか…
登場人物
ギデオン・オリヴァー:人類学教授。別名「スケルトン探偵」
ジュリー・テンドラー:舞台となる国立公園の保護官。
ジョン・ロウ:FBI捜査官。
エイブ・ゴールドスタイン:主人公ギデオンの恩師。
アール・L・チェイス:教授。ビッグ・フット研究の第一人者。
ワシントン州の国立公園で起こった事件
本作のタイトルは『暗い森』ですが、実際にはただの鬱蒼とした森ではありません。行方不明者が多発する国立公園にある謎の森。
人が足を踏み入れたことのない地域が存在するとされ、謎めいた未踏の雨林となっています。

ワシントン州クイナルト ― オリンピック国立公園管理局は今日、公園内のクイナルト地区で先月行方不明になったと思われる二人のハイカーの捜索を打ち切ると発表した。
オレゴン州ポートランドのクライド・ハートマン(三十八歳)とシアトルのノリス・エカート(二十九歳)は、三月初旬に数日の間隔を置いて、クイナルト湖の北西の雨林で消息を絶った。
犯人はインディアン説– 原住民が関与している可能性はあるのか?
人類学教授ギデオン・オリヴァーは、現場で発見された遺骨からの分析をもとに「一万年前のインディアンが今も生きていて、犯行に及んだ可能性」を示唆するという、実に大胆な仮説を立てます。
しかし、この仮説は本当にあり得るのか?

■ 推論の根拠
インディアンの墓地で死体が一体発見された。インディアンの籠に入れて埋葬されたインディアンの白骨と一緒に埋まっていた。死体には骨の槍が刺さっていて、それはここらに住んでいたインディアンが使っていた槍とそっくり、と物語中ではこんな分析結果が。
- 骨の槍は、かつてこの地域に住んでいたインディアンが使っていたものと酷似していた。
- 公園内の雨林には未開の区域が存在する。
- 一部の地域は人類の手が及んでおらず、そこに未知の存在が潜んでいる可能性もある?
■ この推論の問題点
ギデオンの仮説はあまりに荒唐無稽に思えますが、彼の専門知識をもとにすると、まったくあり得ないとは言い切れません。
しかし、槍が本当に「一万年前のもの」なら、誰がどこで手に入れたのか?
そもそも、今の時代に「一万年前の人間」が生きている可能性はあるのか?
という点を考えると、やはり「何者かが意図的に仕組んだ罠」である可能性が濃厚です。
一方、国立公園の保護官であるジュリーは、インディアンが公園内にいることはありえないと反論します。
「骨の槍で?」とジュリーが言った。「ご冗談でしょう。私の言った槍の穂先は、一万年前のものよ。それにここら辺に住んでいるインディアンは、クィリウート族とクイナルト族だけど、彼らは養魚場とモーテルの経営にいそしんでいる、コンピューターを駆使して。
骨の槍をもって駆け回ってはいません。」
読者にとっては、序盤の時点で理論が大きく飛躍しているように感じられます。
そのため、『本当にこの展開で進んでいくのか?』という疑問が生じ、物語の行く先がますます謎めいてくる印象を受けます。
科学 vs 疑似科学
主人公ギデオンは、恩師エイブのもとを訪れます。
コーヒーテーブルに置かれていた『クロニクル』を手に取り、第二面の記事についてエイブと語り合うシーンから。
クイナルトに出没する未知の生物。スケルトン探偵ギデオン・オリヴァーによれば、ビック・フットの可能性も
形質人類学者 ギデオン・オリヴァー氏は、エカートさんは大きな骨製の槍の穂先が突き刺さって死んだものと見られる と語った。
槍の穂先は今も白骨の背骨、第七頸椎に刺さっている。
「骨製の穂先をこれほど深く突き刺すには超人的な力が必要でしょう」とカリフォルニアの人類学者は語る。 そんな力のある生物とは何でしょうという質問に対して、オリヴァー氏は、「ビック・フット」の仕業ということもありうると思います」 と答えた。
記事では前後関係を無視し、事実を歪曲した形で報道されていました。ギデオンは、この捏造を指摘し、恩師エイブの誤解を解こうとします。
そして、ビッグフットに関する研究には、疑似科学的なものやくだらない論文が多すぎると嘆きます。
しかし、エイブはギデオンの主張を認めつつ、大学教授として名の知れた人物であるチェイス教授に、一度話を聞いてみるのはどうかと提案します。

チェイス教授は、ビッグフットの存在を主張し、物的な証拠も掴んでいると豪語します。
一方で、ギデオンはあくまで冷静に反論しますが、それに対し、チェイス教授の主張は次第に熱を帯び、論争は激しさを増していきます。
「私は奇人変人でもUFOマニアでもない。一山当てようなんて魂胆があるのでもありませんよ。独学とはいえ、あなたと同じに科学者だ。生半可なことを言っているんじゃありません。」
~中略~
「ビック・フットは存在する。私にはわかっているんです」 指が曲がって、こぶしとなり、テーブルをドンと叩いた。「チェイス先生」 とギデオンは言った。 「とおっしゃっても、それを裏付ける証拠は現存しないし、発掘されてもいません。 北米大陸では類人猿の骨は一本も発見されていない。 この大陸にこれまで生息した霊長類は、人類だけです」
ここでの話は、一万年前のインディアンが今も現存しているという話以上に、インパクトのある印象を与えます。
ギデオンが論理的にはありえないと否定しつつも、わずかな可能性を残しながら物語は進んでいきます。
「ビッグフット」は、未確認生物(UMA)の中でも特に有名な存在であり、北米の森に生息するとされる巨大な類人猿。
しかし、この伝説は長年にわたり科学界で否定され続けています。
本作では、形質人類学者ギデオン・オリヴァーが、メディアの歪曲報道とビッグフット信奉者との論争に巻き込まれながらも、科学的視点を貫こうとする姿が描かれていました。
科学の基本は「証拠」に基づくものであり、客観的なデータがなければ、どんなに魅力的な説もただの仮説に過ぎません。
一方で、疑似科学は「証拠がないこと」を逆手に取り、「証拠が見つかっていないだけ」と主張する傾向があります。
まさに、チェイス教授の論調はこの疑似科学の通りかもしれません。
まとめ
『暗い森』の核心は、「雨林の奥に本当に何かがいるのか?」 という謎です。
ギデオンは科学的視点から冷静に分析を進めますが、事件の背景には太古のインディアンの存在が絡み合います。単なるミステリーの範疇を越えた内容となっているので、ノーマル?な推理小説以上のスリルを求めたい方にはうってつけです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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